私の新宿三丁目物語。初めてのゲイバー
約7年前くらいですかね、人生で初めてゲイバーの扉を叩いたのは。
そのきっかけについては、また後々書けるタイミングがあれば書きたいと思うので割愛しますが。
ずっとゲイバーには興味あったのだけど、いくらお一人様が得意な方の私でも、なかなか一人で初見のゲイバーに行くのは勇気が必要だった為、かなりネット検索で吟味した。
やっと行ってみようと思えた店は、新宿三丁目にある、とある清潔感のありそうなゲイバー。
当時はまだInstagramがそれほど普及してなかった為、情報はホームページのみ。
写真を見る限り、カウンター席とテーブル席もある少し夜カフェっぽい雰囲気。
女性のお客様も気軽にどうぞ、的なことが書かれていた。
しかも、ゲイバーといえば日本で最もLGBTの世界が集結する新宿二丁目、ではなく三丁目ってところがまた私にとってハードルを下げてくれた。
ある冬の日の夜。
小さくはないビルの3階、オシャレな木の扉はガラスもはめ込んであるけど、中を覗こうとしても席まではよく見えない。
楽しみと不安と緊張をもって、呼吸を整えてから私はその店のドアを開けた。
ボタニカルな花柄の壁と木製のテーブル、椅子。観賞用植物がところどころにあって写真どおりで安心した。
日曜の夜遅い時間ともあって、お客さんはカウンターに男性一人。更にホッとした。
すると、
「いらっしゃいませぇー!一人??女の子好きだから嬉しい〜♪どうぞー!」
気さくなスタッフが元気に迎え入れてくれた。
細身でカジュアルな雰囲気の男の子。
先客の男性とは3つ席を空けてカウンターに座り、ひとしきりドリンクの注文と挨拶した後、
そのスタッフは、
「何で今日一人でここに来てくれたの?」
タツヤとの出会い。
フロアよりも1段高い床のカウンターの内側に立っているタツヤは、目線でいうと上からのはずなのに、座っている私の目を覗き込むようにして、とてもつぶらな小動物のような瞳で、私の話を聞いた。
今でもその時の表情と、私の心が柔らかくなっていく感覚を鮮明に覚えている。
ある程度話しをした時、どんなタイミングだったかは忘れたが、3つ空けて隣にいるカウンター席の男性が声をかけてきた。
「ねぇねぇ、俺もその話聞いてもいい?」
ユウジとの出会い。
オフィスカジュアルなジャケット姿で30代同世代の雰囲気。
その日店のスタッフはタツヤだけで、席を詰めて、3人で話した。
ユウジは、落ち着いた雰囲気だけどどこか伺うような、壁を感じさせるような様子のある、不思議な空気感を持っていた。話しかけてくれたことがとにかく嬉しかった。
私がゲイバーに行こうと思うに至った、私としてはとても切ない理由と、この店を選んだ理由を、二人は互いの話を交えつつ聞いてくれた。
当時誰にも話せない大きな打撃をくらっていた私は、初めて赤裸々に他人に話せることができて、心底嬉しかった。
二人はもちろんゲイなので私は恋愛対象にならない。それが心地良い。
私は話す相手が女性だと無意識にとても気を使う。
女性は聞いて欲しい、わかって欲しい、察して欲しい、が強いからだ。私はそれに自ら答えようとしてしまうから、自分のことはあまり話せなくなるし、なんだか疲れる。聞いて!わかって!を私に臆せず言ってくるようなワガママなくらいの女子の方が楽なくらいだ。
二人はそれとも違った。
まず、女性に対する優しい対応が常にある。それは恋愛感情とか下心とかではなく、力の強い物が弱い者を守るような本能的優しさ。(調子に乗ってる女性に対してはとても厳しいけど笑)
そして、話したい時は聞いて!と言って話してくるし、私が話している時はしっかり正面から聞く。
ノンケの男性にありがちな(偏見ですごめんなさい)、わかったフリをして複雑な話を面倒くさそうに流すようなことも、やたらと前向きな言葉をかけてくることもない。
理解できない部分にはちゃんとわからないと言う。
苦しい、悲しい、嬉しい、ムカつく、という感情には寄り添って共感してくれる。
更に、言葉の選択が新鮮で面白かった。
今となればこうして、なぜ心地よいのかの理由を言えるけど、当時まだなぜか違うとだけ漠然と感じていた。
タツヤとユウジとの出会いをきっかけに、私はこの店に通い詰め、友達が増え、癒されていく。
7年経った今も会ったり連絡を取る友人は随分限られたけれど、とても大切な大切な思い出が生まれた。
私の新宿三丁目物語は、またゆるゆると書けていけたらなと思っています。